2024年1月3日、大阪北区の梅田の映画館「シネリーブル梅田」朝9:50の回で鑑賞した。
名のある監督の作品ではあったけれどその監督の作品は観たことがなかったものの、SNSや劇場の予告編などで醸し出されている雰囲気がとても好みだったので、気になって観に行くことにした。
チケットはインターネットで購入して、そのメールのQRコードで入場できた形だった。朝一番で年始だったが、映画館はそこそこににぎわっていた。4番スクリーンでの上映だった。特に映画館で飲食物は購入しなかった。
座席は前から4列目の中央付近を購入した。その席あたりが観やすいと知っていたのでその座席を指定した。スクリーンは中規模の大きさのものだと思う。満席ではないが、ほどほどに混み合っていた。映画館そのものが映画好きな人が集まるようなところなので、劇場内はそれなりにひそやかで、観やすい環境にあった。
枯れ葉映画感想口コミレビュー!
中年男女のもどかしく純粋な恋愛模様が、どこかこそばゆく丁寧に描かれていた作品で、とても静かに心に残るような感触を受けた。ラジオから聞こえるのは現代ウクライナ侵攻のニュースで、間違いなく現代の設定なのに、スマホなどの現代らしいアイテムはごくごく最小限にとどめられ、どこかノスタルジックさを全体的に漂わせていた空気感がとても良かった。主人公の男性と女性は少年少女のような淡いやりとりを繰り返しながら、男はアルコールに溺れ職を追われる自堕落さを見せ、女は不当解雇に反論し怒るという彼らの年代らしい社会性も見せ、ただの浮ついた物語ではない側面もあった。けれど、その社会構造の容赦のなさ、不遇さを描きつつも、バーでは人々が歌い集い寛いでいる側面も描き、ただ労働する人々の悲哀だけでなく、それでもしっかりと地に足付けて生きている様子をも描いているように感じられた。交わされる会話はどれもぶっきらぼうで、洒落てもいないけれど、だからこそすっと馴染んでいけるような飾らない温かみがあった。豊かではないけれど、心は満たされて生きているようで、そんな彼らがうらやましくも見えた。
冬のヘルシンキの街の風景そのものも現実的に描かれ、気候的な寒さと、人々の置かれる社会構造の辛さを合わせて描き出されているように感じられた。その一方で、カフェの内装や女性の家のインテリアなどでビビットなカラーを使ってもいて、色彩のセンスが随所に利いている作品だとも感じた。気取った構図を使っているわけではないのに、場面場面でポストカードとして切り取れるようなカットが多くて、パンフレットの場面写真がとても洒脱なもののようにすら見えて、とても素敵だった。
主人公の男女の恋愛は、恋愛というと大げさなくらいひそやかにそっとしたやり取りがつづき、情熱的とは反対側にある表現の連なりのように感じられたけれど、そのつつましさがとても好ましく、ちょっとした目線の交わし方や惑う台詞がいとおしく感じた。そして女性に寄り添う犬がとてもあたたかくいとおしい存在として映されていて、犬の存在が彼と彼女をつないだようにすら思えた。
枯れ葉というタイトルには、いろんな思いが込められているのだと思うけれど、人生が青々と輝く若葉の時代を過ぎ、枝から落ち行く枯れ葉のような、時代から取り残されつつある年頃になったとしても、風が吹けばかさかさと軽やかに舞うし、心地よい音を立てて歌うこともある、そんな、人生いくつになっても捨てたものではない、という意味合いもあるのかと思えもした。
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